【ネタバレ★5】話芸で被差別に落とし前をつける痛快なスタンダップ・コメディ「ホームカミング・キング」
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「ホームカミング・キング」
作品について(情報/評価/要素)
評価:★★★★(5)
作品要素
政治 | 宗教 | 歴史 | 人種 |
恋愛 | 健康 | 仕事 | 人間関係 |
移民 | 下ネタ | フェミ | 自虐 |
制作年度:2017年/制作国:アメリカ/上映時間:1時間12分
あらすじ
ハサン自身が、幼少から現在にいたるまでの生い立ちを自虐まじりに語るコメディ・ショー。
- インド系アメリカ人に向けられる視線と、若い頃の自意識の葛藤
- 良好な関係だと思っていた白人ガールフレンドとその家族から受けた(悪気のない)差別
- ハサンが大人になりCMやドラマ出演以降、再会した彼女とのやりとり
などなど、涙あり笑いありの半生を、面白おかしく・テンポ良く語りかけます。
ハサン・ミンハジ(Hasan Minhaj)について
- カリフォルニア出身のインド系アメリカ人(33歳)
- インドから移民として渡米した両親を持つ移民二世
- イスラム教徒(奥様はヒンドゥー教徒)
- カリフォルニア大学デービス校で政治を学んだ後にスタンダップコメディの道へ
タイトルの「ホームカミング・キング」は学校を挙げて行われる同窓会での美男美女コンテストのようなもの(の勝者男性)を指す単語。
日本で彼の事を検索すると「ハサン・ミンハジ」「ハサン・ミナジ」「ハサン・ミナージュ」と表記されることもあるようです。*1
ネタバレ感想
笑ったあとだからそのほろ苦さに泣いてしまう。
スタンダップコメディって「西洋漫談」みたいに訳されていて、フーン漫談か~と思って見始めると、楽しみ方や笑いどころがよくわからない…となりがちな気がするんですが、漫談というより「芸人達が個々の半生を語る+それが共感できたり、とんでもなかったりして面白い」っていうスタイルで見ると入りやすい気がします。スタンダップコメディへの構え方(の一つ)を教えてくれた作品でした。
ハサンは移民一世の父親の強烈な個性を目の当たりにする生活の中で「インド系」の存在を客観視してしまう気持ち、若い頃の過剰な自意識も手伝って「自分ってダサいのでは?いやいや誇りを持つべきなのでは?」をいったりきたりする葛藤を語ります。
彼はそれを人種由来のものという体で語っているけど、誰しも若い頃に抱いたことのある劣等感や焦燥感にもよく似ている。だから共感しちゃうし笑えちゃう。
白人のガールフレンドを家に招く際、ハサンは両親に「普通にして、普通のアメリカ人っぽくいて」とお願いする。けど現実は
「父と母はヒンドゥー語で会話、母は美味しいパコラを揚げる、ZeeTVからはインドドラマ「家族の四季」…(情報が)多すぎる!」
ハサンは学生時代のダサくて・恥ずかしくて・悲しかった思い出を抱えたまま大人になる。けれどコメディアンとしてのキャリアを成功させていく事こそが、自身にあらたな価値をつけ、今までのモヤモヤへの一番の復讐になる。
- 有名コメディクラブでの主役が決まったとき
- ピザハットのCMに出演したとき…
ハサンに感情移入するほど、彼の躍進は痛快。折に触れてSNSを通してコンタクトが取れる元ガールフレンドの鼻をあかしてやりたい、でもそれを悟られたくない…という葛藤&衝動、とうとう怒りをぶつけた後(会場大喝采)に、て本当にあれでよかったのかと自省し(この時の会場の静まり返り方ときたら!)し、そしてあの「デイリーショー」のオーディションへ…さんざん笑った後に差別/被差別感情への落とし前をつけるべく、心象風景を怒涛のように畳み掛けてくる様は圧巻です。
ピーボディ賞を受賞
世界の優れたテレビやラジオの作品を表彰する「ピーボディ賞」。ホームカミングキングは2017年にこの賞を受賞しました。
日本の番組では2012年にフジテレビの「わ・す・れ・な・い 東日本大震災155日の記録」2013年に「デザインあ」等が受賞していて、なんとなくこの賞の雰囲気が掴めるかなと思います。